野良猫たちのお話

 
実のところ野生のキツネや猫などは、突然馬場を横切ったり傍らでうずくまっていたりするため、馬が驚いて立ち上るなどの危険があるので、私どものような仕事場では余り歓迎されざる動物です。しかし、根っから動物好きの社員のことですから仕事と日常は別問題で、場内ではこれまで常に数匹の野良猫が安心して暮らしてきました。
 なかでも牡猫「スズ」の一生は野良猫として幸せな部類に属したのかも知れません。その容姿は特別に優れているわけでもなかったのですが、とにかく人懐っこく、誰にでも近寄って来て足元に顔を擦り付けたりするので皆んなから愛されました。
 抱かれたり、おんぶされたり、果てはひっくり返されたりしても爪を立てることなく、されるがままに大人しくおもちゃにされる毎日でした。
 しかし、ある日を境に突然元気をなくし、歩行も不安定で食欲も失ってしまったため、当社の獣医による点滴やビタミン剤投与などの治療が懸命に施され、一時は回復したものの、ついには<帰らぬ猫>となってしまいました。野良猫の末期にこれほど手厚い看護を受けた例は聞いたことがなく、これもひとえに生前の人柄ならぬ猫柄の賜物であったに違いありません。きっと心残りのない安らかな最後であったことでしょう。

 どこからともなく3匹の子猫が姿を見せ始めたのはその頃からでした。

 「スズ」の仲間の「マイケル」が父親であり、その母親は出産後に行方不明となったことが分かっています。道路わきのコンクリート製の蓋があるU字溝をねぐらにして、始めのうちは人が近寄るとすぐに逃げ込んでいたものでしたが、いつの頃からか少しずつ警戒心を解き、与える餌に寄ってくるようになりました。しかし、いずれも人懐っこさや愛らしさでは「スズ」の足元にも遠く及びません。
 写真は左から「スモモ・ライチ・ドリアン」と名付けられていますが、これと異なった自分なりの名前で呼んでいる社員もいるようです。このうち「ドリアン」だけはその面構えを見ても想像がつくように、いまだに野良の性格を強く残して他の二匹とは別の単独行動を好み、餌時以外はめったに人に近づくことをしません。
 みな牡猫であり「マイケル」の例もあるので、去勢手術を施そうと試みましたが捕まえる事が出来ないので諦めました。間もなく3匹共に発情期を迎えるわけですが、どこで伴侶を探し出すのでしょうか。

 そして彼らの子供たちは私たちの前に姿を表して来るのでしょうか。

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